一般社団法人静岡県土木施工管理技士会

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平成25年度建設現場視察研修

富士地区
企画・広報委員 長谷川忠士

静岡県土木施工管理技士会富士地区では、平成25年9月9日から10日にかけ福島県いわき市小名浜港災害復旧現場の視察研修を実施しました。

当日は、国土交通省東北地方整備局小名浜港湾事務所企画調整課長の新田様に『小名浜港』の概要と、東日本大震災による被災状況や災害復旧に向けた取り組み等をご説明いただき、その後3号ふ頭の橋梁工事現場と、7号ふ頭など主な埠頭の復旧状況を案内していただきました。

3号ふ頭 橋梁工事現場

福島県の沿岸部には多くの発電所が立地し、東北地方や首都圏への電力供給に寄与しています。小名浜港からは、東京電力(株)広野火力発電所、サミット小名浜エスパワー(株)常磐共同火力(株)勿来発電所等に燃料を輸送して、約185万世帯の電力に相当する573万kwの発電をしています。

平成23年5月、小名浜港は東日本で唯一の国際バルク戦略港湾(石炭)に選定されました。平成23年は、東日本大震災の影響により減少していた取扱貨物量も平成24年には、火力発電所のフル稼働により石炭、重油、原油などの取扱量が大幅に増加したため、震災前の最大値に迫る量を記録しました。平成24年総取扱貨物量は1,788万トンで、静岡県の港湾と比較すると、清水港の1.7倍(H23)、田子の浦港の3.5倍(H23)となります。取扱貨物の内訳は、石炭が35%、重油21%、原油14%、石油製品7%、金属鉱6%、その他17%で電力・エネルギー関連の企業・工場が多いことが伺えます。

7号ふ頭 石炭の荷役作業

東日本大震災では、青森県八戸港から茨城県鹿島港に至る太平洋側の全ての港湾(国際拠点港湾及び重要港湾11港、地方港湾17港)が被災し、防波堤や岸壁に大きな被害が生じ、港湾機能が全面的に停止しました。

神戸港以外の大阪港等の近隣港湾が利用できた阪神・淡路大震災と違い、広域にわたり全ての港湾が使用不可能となったため、東北一円の生活及び産業に必要な物資が輸送できない状況となりました。

小名浜港でも多くの岸壁や護岸、荷役機械等に被害が発生し、ほぼ全ての係留施設が使用不可となりました。

災害復旧は、被災調査及び航路障害物調査・撤去等の啓開作業から始まり、震災後5日目の3月16日には緊急物資輸送岸壁として藤原ふ頭1号・2号岸壁の供用が開始され、3月28日には大剣ふ頭の7号・8号岸壁が供用されて、緊急物資の受入及びタンカー入港により、ガソリンなど燃料不足が解消されました。

その後、企業の操業再開に合わせ、被災後3ヶ月程度で応急復旧し、暫定利用可能な岸壁を7割程度確保しました。

今後の継続的な利用や再度の地震に備え、岸壁本体の安定性を確保するため本格復旧工事を実施中で、平成25年度中に全岸壁の復旧完了を目指しています。

私たちの住む静岡県は、近い将来大規模な地震「東海地震」が発生すると考えられています。大規模地震が発生すると陸上輸送ルートは分断、あるいは麻痺することが予想され、海からの救援物資の搬入や救援など、港が担う役割は極めて大きいと考えられます。また、静岡県は製品出荷額等が全国第2位の「ものづくり」県で、その物流において港湾が果たす役割は大きく、地震により港の機能が停止でもすれば地域の経済活動に多大な悪影響を及ぼすと思われます。

地震や津波に備えて岸壁を強化し埠頭の耐震対策を進めることは、単に災害時の救済拠点となるばかりでなく、震災後の地域経済活動を支え、早期の復旧・復興を実現するためには大変重要なことだと、今回の視察で考えさせられました。

「いわき・ら・ら・ミュウ」から「アクアマリンふくしま」を望む

小名浜港の1号ふ頭のいわき市観光物産センター「いわき・ら・ら・ミュウ」や2号ふ頭の環境水族館「アクアマリンふくしま」等からなるアクアマリンパークは福島県内有数の観光拠点です。震災前は、年間約250万人の観光客が訪れていました。平成24年は190万人まで回復したようです。私たちが訪れた日も、平日にもかかわらず多勢の観光客で賑わっていました。福島第一原発では汚染水問題など、まだまだ心配事が尽きないようですが、そんな時だからこそ福島県を観光して、復興を支援されてはいかがでしょうか。

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